2005.1.24 新規追加


2004年塩尻星の会「光害調査」報告


1 光害調査について

塩尻星の会では、長野市立博物館と天文同好会“しなの星空散歩会きらきら”が実施している「光害調査」に参加しました。2003年に続いて2年目となります。この調査には、県内の公開プラネタリウムが組織している長野県プラネタリウム連絡協議会や諏訪地域の教職員からなる諏訪教育会の皆さんも参加しており、県内各地で行われています。
この報告書は、2004年に塩尻星の会が実施した「光害調査」の結果をまとめたものです。調査地点も概略的ですが市内全域を網羅することができました。調査できた地域については光害の状況がわかりましたので、ここに報告します。この報告書が光害防止への一助になれば幸いと考えています。

★「光害」の概要は、別ページの「光害について」を参照してください。

2 調査の方法

ISO400のリバーサルフィルムで撮影した星空の写真を、濃度測定して夜空の明るさを算出します。

調査期間:2004年5月8日(土)〜5月21日(金)、6月6日(日)〜6月19日(土)
撮影時刻:21時〜22時(撮影対象がおおむね南中になる時間)
撮影対象:うしかい座アルクチュルス
撮影機材:35mm判の一眼レフカメラ、50〜55mmの標準レンズ
撮影方法:レンズの絞りを「F=4.0」にして「80秒」撮影
濃度測定:長野市立博物館へ濃度測定を依頼
  ○デンシトメーター(フィルムの濃度を測定する機器)で濃度を測定します。
  ○測定値の差から夜空の明るさ(1平方秒あたりの明るさ)を算出します。

3 調査結果(空の暗い順)

   数値が高い方が空が暗いことを表しています。
順位 調査地点 緯度 経度 明るさ
2004年 2003年
1 乗鞍高原スキー場第3駐車場 36度06分40秒 137度36分57秒 21.07  
2 北小野善知鳥峠下 36度03分50秒 137度58分45秒 20.89  
3 白滝上林間広場 36度03分01秒 137度51分00秒 20.74  
4 みどり湖付近 36度05分26秒 138度00分00秒 20.72  
5 山形村役場東畑 36度10分11秒 137度52分54秒 20.41  
6 上伊那郡箕輪町坂井 35度54分18秒 137度59分40秒 20.41 20.44
7 塩尻峠 36度05分01秒 138度01分57秒 20.39  
8 山形村役場前 36度09分53秒 137度52分52秒 20.39  
9 中西条構造改善センター 36度05分42秒 137度58分17秒 20.31  
10 洗馬小曽部沓沢湖南 36度06分09秒 137度54分03秒 20.21 20.74
11 アスティ片丘下 36度08分07秒 138度00分28秒 20.21  
12 宗賀小学校校庭 36度05分14秒 137度55分25秒 20.18  
13 片丘小学校東側 36度08分29秒 137度58分58秒 20.03  
14 平出遺跡公園 36度06分05秒 137度56分45秒 20.00  
15 今泉テクノヒルズ 36度07分18秒 137度59分48秒 19.98 19.59
16 SNR予定地(人材育成エリア) 36度07分57秒 137度59分37秒 19.95 19.51
17 長野県総合教育センター北側 36度08分46秒 137度59分58秒 19.85 19.38
18 信州スカイパーク 36度09分14秒 137度55分32秒 19.72  
19 広丘小学校校庭 36度09分01秒 137度56分57秒 19.72 19.08
20 リバーサイドパーク堅石 36度08分13秒 137度56分01秒 19.69 19.45
21 塩尻東公民館北側 36度06分08秒 137度58分46秒 19.61  
22 中央スポーツ公園運動広場 36度07分14秒 137度57分23秒 19.32  
23 市立体育館駐車場 36度06分46秒 137度57分30秒 19.32  
24 吉田東公民館東側 36度09分54秒 137度57分28秒 19.19  
25 松本市寿赤木山 36度08分53秒 137度58分31秒 19.16 19.32
26 昭和電工南 36度06分06秒 137度57分11秒 19.08  
27 塩尻情報プラザ前 36度06分44秒 137度57分14秒 19.06 19.19
28 長者原公園グラウンド 36度09分42秒 137度56分59秒 18.95  
29 野村グラウンド 36度08分29秒 137度58分02秒 18.84  
30 吉田蝦の子池 36度09分25秒 137度57分45秒 18.19  
31 野村八幡水苑 36度08分53秒 137度57分22秒 18.16  




★塩尻市外の地図および2003年の調査地図は別ページになります。 →光害調査地図 

【講評】
(1)はじめに
調査期間の後半は梅雨の時期でしたが、2004年は空梅雨ぎみで比較的天候が良い日が多く、多くの地点について調査をすることができました。2年続いて調査できた箇所もありましたが、今回2003年の結果と比較することについては差し控えておきます。同一地点における夜空の明るさの経年変化については、今後何年かの調査結果がまとまった際取り上げることにします。
市外では乗鞍高原や山形村、箕輪町においても調査しましたが、ここでは市内の調査地点について講評します。

(2)全般的な状況
今回調査できた地点の中で一番暗い場所は「北小野善知鳥(うとお)峠下」でした。ここは国道153号線の分水嶺を北小野寄りに行った場所です。
塩尻市全般の傾向として、南〜東方向(岡谷市・辰野町境)と、南〜西方向(楢川村・朝日村境)が暗く、北方向(松本市境)が明るい傾向です。大門、広丘、吉田地区は全般的に明るい状況です。
北小野(明るさ:20.89)
野村八幡水苑(明るさ:18.16)

(3)地区別の状況
〔塩尻東・北小野〕==============
両地区とも、市内では夜空が暗い地域です。市街地から離れた「北小野善知鳥峠下」「みどり湖付近」は特に暗い夜空でした。みどり湖の下流はホタルの群生地として有名ですが、この場所がホタルのえさとなるカワニナの生育にふさわしい水質であるということだけでなく、光害が少ないことも生育しやすい要因と言えるのでしょう。標高が高い割に「塩尻峠」が明るいのは、諏訪方面の光害の影響を受けているためのようです。また市街地に近い「塩尻東公民館北側」は市内の平均値に近い明るさでした。

〔片丘〕===================
市内の平均かやや暗い空の地域です。東山山麓方面では、標高の高い「アスティ片丘下」が暗く、市道東山山麓線沿いでは「今泉テクノヒルズ」「SNR予定地」「長野県総合教育センター北側」の順に明るくなり、松本市に近くなるほど夜空が明るい傾向があります。「片丘小学校東側」は塩尻市街地に近いにも関わらず暗かったのは、標高が低い分、夜景として見える市街地の光害を拾っていないためと思われます。標高や市街地からの距離による影響と、夜景として見える市街地の光害の影響が混在する地域です。

〔洗馬〕===================
小曽部の谷を登った「白滝上林間広場」では、「北小野善知鳥峠下」に次ぐ暗さでした。「沓沢湖南」も比較的暗い空です。「信州スカイパーク」はファミリースポーツソーンと呼ばれる空港南西部にある公園で調査しました。この地籍は塩尻市になります。松本市今井地区に隣接して明るく、市内平均値に近い明るさでした。全般的に洗馬地区は暗い地域です。

〔宗賀〕===================
「宗賀小学校校庭」「平出遺跡公園」では、比較的暗い夜空でした。さらに南の楢川方面に行くほど暗くなる傾向であると思われます。しかし平出遺跡の西側の空は、国道沿いのトラック用ターミナルの照明、従来からあるガソリンスタンドの照明が明るいです。北から東にかけての空は、松本市や大門商店街による照明の影響があります。南側の空は比較的暗い夜空でした。
「昭和電工南」は大門に隣接する場所で、大門商店街に近く、街路や大型店舗の看板照明に影響されて明るいと思われます。

〔広丘・吉田〕=================
市内では最も明るい地域でした。この地域は所により大変明るい屋外照明が設置されていて、その照明がある場所ない場所とで夜空の明るさに差が生じていると思われます。「リバーサイドパーク堅石」や「広丘小学校校庭」ではそうした照明が少ないようです。しかし、「広丘小学校校庭」では南側市道の外灯や、西側に新設された塩尻北部公園の照明が明るく、漏れ光も生じていました。
調査地点で最も明るかったのは「吉田蝦の子池」と「野村八幡水苑」でした。これは国道や松本市に近く、付近にある事業所の屋外照明が漏れ光を生じているため明るいと思われます。この地域はこれからも開発は進み新しい屋外照明が新設されると予想されることから、漏れ光を生じている箇所を把握するためにも、今後の調査で経年変化を見る必要があると思われます。

〔大門〕===================
「市立体育館駐車場」と「塩尻情報プラザ前」の2箇所で調査ができました。平均では広丘地区より明るいが、調査地点には18.5平方秒/等以下になるような極端に明るい場所がないため、平均的に明るい傾向があります。大門商店街沿いなど調査地点を選べば違う結果が出たかもしれません。


(4) まとめ
市外を含め多くの場所で調査することができ、市内ではほぼ全域を網羅することができました。これにより、市内全般と地区ごとの光害の傾向を把握することができました。特に夜空が明るい場所の調査は、光害の状況を知るうえで大切なことです。夜空の明るい広丘や吉田地区でも多くの場所で調査することができたことは大きな成果でした。調査結果を総括すると、市の南東から南さらに西側にかけてはまだ暗い夜空が残っていますが、全般的には夜空が明るく、特に市街地ではほとんど星空観察は難しい状況です。
今後は経年変化も把握するため、継続的な調査を実施していくように考えております。
さいごに
長野県や塩尻市などの自治体においても、この光害調査報告書を活用され、光害対策や光害防止の施策をすすめられることを期待しています。地球温暖化防止の施策では、クリーンエネルギーの普及を進められていますが、エネルギーを使わないような施策も必要です。省エネルギーにもつながる光害防止の施策をすすめることは、地球温暖化防止の手段のひとつと考えております。
今回の調査に対して、調査実施に対する助言と調査フィルムの濃度測定を一手に引き受けていただいた長野市立博物館の大蔵様、調査に関わる様々な支援をいただいた塩尻市環境事業部環境保全課、お隣りの諏訪・岡谷地域において光害調査を実施され、情報提供をいただいている諏訪教育会の藤森様に対しまして、それぞれ感謝の意を表します。


●2004年の調査については、配布用の報告内容「塩尻星の会光害調査報告書(PDF)」もあります。
●2003年の報告内容は別ページの「光害調査報告(2003)」を参照してください。